信心獲得章

信心獲得章しんじんぎゃくとくしょう

信心獲得しんじんぎゃくとくすといふは第十八だいじゅうはちの願をこころうるなり。

信心しんじんをいただくということは、阿弥陀仏あみだぶつの第十八願だいじゅうはちがんのおこころを聞きかせていただくことです。

この願がんをここうるといふは、

その第十八願だいじゅうはちがんを心得こころうるとは、第十八願の内容ないようを知るとともに、この願がんが完成したことをあらわす

南無阿弥陀仏なもあみだぶつのすがたをこころうるなり。

南無阿弥陀仏のおいわれ（由来ゆらい）を心得こころうることであります。

このゆえに南無なもと帰命きみょうする一念いちねんの処ところに

私が、阿弥陀仏の仰おおせにまかせたその時に、

発願回向ほつがんえこうのこころあるべし。

阿弥陀仏の救いたいという願いと、
その願い通りに差し向けられた救いのはたらきがあらわれているのです。

これすなはち弥陀如来みだにょらいの凡夫ぼんぶに回向えこうしましすこころなり。

これこそが阿弥陀如来が、私達にお念仏を与えられた御心おこころなのです。

これを『大経だいきょう』には「令諸衆生功徳成就りょうしょしゅじょうくどくじょうじゅ」と説けり。

このことを『大経だいきょう』には「もろもろの衆生しゅじょうをして功徳くどくを成就じょうじゅせしむ」と説といています。
（全ての生きとし生けるものに、南無阿弥陀仏の功徳をもって、さとりをひらかしめる）

されば無始以来むしいらいつくりとつくる悪業煩悩あくごうぼんのうを、

ですから、はてしない昔から、造つくり積つみ上げて来た私の悪業あくごうや煩悩ぼんのうを、

のこるところもなく願力不思議がんりきふしぎをもって消滅しょうめつするいわれあるがゆゑに、

一つ残らず消滅しょうめつさせるはたらきが、
人の考えの及ばない願力がんりきには具そなわっています。

正定聚しょうじょうじゅ不退ふたいの位くらいに住じゅうすとなり。

だからこそ信心しんじんを獲得ぎゃくとくすると、正定聚しょうじょうじゅ・不退ふたいの位くらい（必ずさとりをひらくことが定さだまった者もの）となるのです。

これによりて「煩悩ぼんのうを断だんぜずして涅槃ねはんをう」といへるはこのこころなり。

これによって「煩悩ぼんのうを断ぜずして涅槃ねはんを得うる」（煩悩を消滅しょうめつさせないままに、さとりをひらくことが定さだまる）といわれるのです。

この義ぎは当流とうりゅう一途いちずの所談しょだんなるものなり。

この御教みおしえは、浄土真宗じょうどしんしゅうにのみ説とかれるものです。

他流たりゅうの人に対してかくのごとく沙汰さたあるべからざるところなり。

他宗派たしゅうはの人に対して、この御教みおしえを公言こうげんしては（無用むようの誤解ごかいと争あらそいを生うむので）いけません。

よくよくこころうべきものなり。

よくよく注意ちゅういしなければいけません。

あなかしこあなかしこ。

もったいないことです。